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FIP診療について

当院での猫伝染性腹膜炎(FIP)の治療について

猫伝染性腹膜炎とは

猫伝染性腹膜炎(Feline Infectious Peritonitis / FIP)は、コロナウイルスの一種であるFIPウイルスによる感染症です。このウイルスは、もともとは猫コロナウイルスという比較的多くの猫がかかっているウイルスが変異して強毒化し、発症するものです。通常の猫コロナウイルスは時に猫に腸炎を起こすこともありますが、感染していても無症状の事も多く、通常問題となる事は少ないとされています。
猫コロナウイルスがFIPウイルスへと強毒化する原因は、ストレスと言われていますが、まだそのメカニズムは明確には分かっていません。
一般に、3歳以下の若い猫で、雑種猫よりも品種猫、また単頭飼いよりも多頭飼いでの発生が多いと言われています。

FIPの症状について

FIPを発症した猫は、初期には元気や食欲の低下や発熱などの一般的な体調不良の症状を起こすことが多いため、「何か体調が悪そう」という主訴で動物病院を受診することも少なくありません。
FIPにはおおまかに「ウェットタイプ」と「ドライタイプ」という2つのタイプとその混合型があり、上記の症状以外に、それぞれ以下のような症状を起こします。

  • ウェットタイプ
    腹水や胸水の貯留を起こすタイプです。腹囲の膨満(腹水の貯留)や呼吸の苦しさ(胸水の貯留)、黄疸、 下痢や嘔吐などの症状がよく見られます。FIPの中では比較的遭遇が多いものとされています。
  • ドライタイプ
    体の中に肉芽腫と呼ばれるしこりを作るタイプです。ウェットタイプと比べ、元気・食欲の低下などの非特異的な症状以外に特徴的な症状がでにくいタイプのFIPで、一部の猫では脳に肉芽腫が出来てけいれんや起立困難などの神経症状を起こしたり、眼球の炎症により眼が白く濁ってきたり、視力の低下などが見られることもあります。

いずれのタイプも、発症した場合の死亡率が非常に高い病気です。

FIPの診断

FIPは、いくつかの検査を組み合わせ診断していきます。

  • 超音波検査
    腹水の有無や腹腔内のリンパ節の腫大、肉芽腫の有無をチェックするためなどに行います。
  • 血液検査
    FIPを発症した猫では、血液中の白血球数や黄疸、グロブリンの数値や炎症の数値、猫コロナウイルス抗体の数値が上がることが多いです。また、血液の中にウイルスが存在するかを調べることもあります。
  • 遺伝子検査
    ウェットタイプの猫では腹水や胸水を、ドライタイプの猫では肉芽腫の細胞を一部採取して遺伝子診断を行うことでFIPの診断に役立てます。

※FIPの診断はこの検査をしたら確定できる、というものではなく、上記の検査を症状や経過およびその他の検査と合わせ総合的に診断します。その為、特にドライタイプの場合は診断に苦慮する事も珍しくなく、リンパ腫など他の病気との鑑別も非常に難しい場合があります。その場合は診断的治療を開始することもあります。

FIPの治療

長い間FIPは有効な治療方法がなく致死率100%の病とされてきましたが、数年前に抗ウイルス薬(GS製剤)によるFIP治療の報告が初めて出て以来、FIP治療のデータが多く出てくるようになりました。日本でも2018年ごろより一部の動物病院でFIPの治療が行われてきましたが、それはアメリカで製造されたGS製剤の特許権を侵害して作られた海賊版サプリメント(MUTIANなどと呼ばれ流通している物)を用いての治療でした。
これらは確かに治療効果が見られたものの、異常に高額であることや、正規の手続きを経て承認されたものではないため流通も不安定で、しかもその成分・安全性の保証もなく、特許権を侵害しているために法的にも倫理的にも導入しにくいものでした。しかし現在、イギリス、オーストラリアにあるBOVA社より正規の認可を受けた抗ウイルス薬として「GS-441524」と「レムデシビル」が販売されました。
当院でもこれらの薬を使い、国際的に推奨されている方法でFIPの治療をしていきます。

当院でのFIP治療費

FIPのタイプ、重症度、猫の体格などにより診療費は変動します。また、海外輸入薬であるため輸入コストの影響も受けます。過去のMUTIANなどの非正規品と比べ費用はかなり抑えられますが、それでもかなり高額なもの(検査・入院なども含め概算で平均50~100万円ほど)となりますので、詳細についてはまず当院にお電話をして頂き、ご来院の時点で説明します。

※当院でFIPの抗ウイルス薬による治療は、最低で84日間の内服が必要となります。
※薬の量には限りがあります。体格や重症度によっては治療が行えない可能性もあります。

当院でのFIPの治療をご希望される方へ

FIPの治療をご希望される場合、事前にまず必ず当院へお電話によるご連絡をお願いします。
その上でご来院頂き、治療を開始します。

既に他院を受診している方は、掛かりつけ医の紹介状および検査データをご持参ください。

※他院にてFIPとの診断を受けている場合でも、必要に応じて当院でも検査をさせて頂くことがあります。
お薬をお出しできるのは当院を受診している猫さんに限ります。薬のみの処方はできません。

患者様をご紹介頂く動物病院の方へ

各種検査結果・症状・シグナルメントなどよりFIPが強く疑われるものの、ドライタイプ・眼型・神経型FIPなど確定診断が難しい場合は確定診断にこだわらず、数日間の試験的治療を開始するという流れが世界的にも主流となっております。その時点での検査結果等を添えてご紹介下さい。